リフォーム会社で営業をしている30代の波多は、前の会社でリストラにあった経験があり、会社の人付き合いを避けてきました。ところが同僚に誘われて六甲山の登山に参加し、職人気質で社内でも浮いているベテランの妻鹿が、ひとりで「バリ山行」をしていることを知ります。登山道を外れ、道のないところを歩く山行です。波多はやがて、妻鹿の山行についていくようになります。
「芥川賞なのに読みやすい」という感想がとても多く、山の描写の細かさに引き込まれた、自分も一緒に藪をかき分けている気分になった、という声が並びます。仕事への不安と、道なき山を進む感覚が重なっていくところに、働く人ほど刺さる、という受け止め方もありました。
波多が山にのめりこむ一方で、妻と幼い娘へのしわ寄せが気になった、奥さんが寛容すぎる、という声もあります。読む人の家庭や仕事の状況によって、波多への共感の度合いが大きく変わりそうです。
ブクログでは6,000人以上が本棚に登録しています。第171回は、朝比奈秋『サンショウウオの四十九日』との同時受賞でした。
受賞の回・出版社(掲載誌)は日本文学振興会の受賞者一覧によります。感想のまとめは2026-09-27に確認したものです。