主人公は一軒の家です。といっても家がしゃべるわけではなく、その家に暮らした三代の人たちの記憶や気配が、床や柱、天井、タイルといった細部から立ちのぼってくる。一人の青年がその家を描いていくうちに、重なった時間がほどけていきます。
作者は建築士で、材や構造の書き込みの細かさに感心する人が多いです。家が建ってから、ひびが入り、古びて、やがて解体されるまで。読み終えて「時の家」という題名にうなずいた、という感想や、自分が育った家を思い出した、という声が目立ちます。
建築の専門的な言葉が多く、時間も人物も行き来するので、読みにくいと感じた人もいます。物語がなかなか動かない、文章の密度が高くて疲れる、という声もありました。筋を楽しむというより、一文ずつ家の中を歩くように読む本だと思っておくと入りやすそうです。
ブクログに300件近い感想があります。同じ回(第174回)は、畠山丑雄『叫び』との同時受賞でした。
受賞の回・出版社(掲載誌)は日本文学振興会の受賞者一覧によります。感想のまとめは2026-09-27に確認したものです。