1970年代のはじめ、学生運動の熱が冷めていくころ。女子大生の矢野布美子は、大学の助教授・片瀬信太郎と、その妻の雛子に出会います。自由で奔放な夫婦の暮らしに惹かれ、布美子はしだいに二人の世界にのめりこんでいく。話は、事件を起こした布美子がすでに亡くなったところから、回想の形で語られていきます。
「激しく、悲しく、美しい物語」という感想がよく似合う本です。官能とむなしさが入り交じった、退廃的で美しい世界に浸った、という声が多く見られます。文章と情景の描き方がとても繊細で、あの時代の空気がそのまま伝わってくる、という人もいました。切ないのに、読み終えて幸福感が残った、という声もあります。
登場人物に共感しにくい、ふつうの道徳から外れた世界に抵抗がある、という声もあります。内容が重くて読み進めるのに苦労した人もいました。恋愛小説の中でも、かなり耽美な方向に振れた作品です。
ブクログでは3,000人以上が本棚に登録しています。第114回は、藤原伊織『テロリストのパラソル』との同時受賞でした。
受賞の回・出版社(掲載誌)は日本文学振興会の受賞者一覧によります。感想のまとめは2026-09-27に確認したものです。